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福井地方裁判所 昭和44年(わ)57号 判決 1969年8月07日

本店

武生市幸町九五番地

株式会社 中村

右代表者代表取締役

中村巽

本籍並びに住居

武生市幸町九五番地

会社役員

中村巽

明治四二年二月四日生

被告事件

法人税法違反

公判出席検察官

中神正義

主文

被告人株式会社中村を罰金一、五〇〇、〇〇〇円に、被告人中村巽を懲役一〇月に各処する。

但し被告人中村巽に対しこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

一、罪となるべき事実

被告人株式会社中村は、武生市幸町九五番地に本店を置き、昭和四〇年五月一日資本金五〇〇万円をもつて設立し、繊維製品、洋品雑貨の販売業を営むもの、被告人中村巽は、被告会社の代表取締役として同社の業務全般を統括処理しているものであるが、被告人中村巽において、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一、昭和四〇年五月一日より同四一年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が一〇、九九八、五二二円で、これに対する法人税額が三、八四七、四〇〇円であるにもかかわらず、同会社の記帳および決算において、売上げを除外する不正経理を行ない、これにより取得した金銭を、簿外の無記名預金、架空名義預金、架空名義貸付信託とし、あるいは、その金銭で、簿外に、架空名義で株券を買入れるなどして財産をいん匿したうえ、昭和四一年六月三〇日、所轄武生税務署長に対し、右事業年度における被告会社の所得金額が一、一二二、五二三円、これに対する法人税額が三一一、九七〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度の正規の法人税額三、八四七、四〇〇円と右申告税額との差額(実際の金額は三、五三五、四三〇円であるが、国税通則法第九一条第一項に則り一〇〇円未満切り捨てにより)三、五三五、四〇〇円を免れ

第二、昭和四一年五月一日より同四二年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が九、四四四、八一四円で、これに対する法人税額が三、〇八七、五〇〇円であるにもかかわらず、同会社の記帳および決算において、売上げを除外する不正経理を行ない、これにより取得した金銭を、簿外の無記名預金、架空名義預金、架空名義貸付信託とし、あるいは、その金銭で、簿外に、架空名義で株券を買入れるなどして財産をいん匿したうえ、昭和四二年六月三〇日所轄武生税務署長に対し、右事業年度における被告会社の所得金額が九四一、二五三円、これに対する法人税額が二五五、六四〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度の正規の法人税額三、〇八七、五〇〇円と右申告税額の差額(実際の差額は二、八三一、八六〇円であるが国税通則法第九一条第一項に則り一〇〇円未満切り捨てにより)二、八三一、八〇〇円を免れ

たものである。

二、証拠の標目

右の事実は

第一の事実につき

一、武生税務署長奥並弘作成の証明書(請求番号1の分)

一、法人税決議書と題する書面(同3の分)

一、押収してある営業帳簿一冊(昭和四四年押第二一号の二)

一、同じく売上帳二冊(同押号の四、五)

第二の事実につき

一、武生税務署長奥並弘作成の証明書(請求番号4の分)

一、法人税決議書と題する書面(同5の分)

一、押収してある営業帳簿一冊(同押号の三)

一、同じく売上帳三冊(同押号の六、七、八)

全体につき

一、金沢国税局査察課長代継瀬録宛の向当穣、坪内邦夫、柳本まさ子、谷川琴乃、三上強、増田勇助、宮下はつえ、西田高志、佐々川卯太郎、遠藤和子、宮川亜米子、南坂喜久子、西正愛子、山本弥男、白崎善右エ門、橋本和子、春日敏親、宇野亨、菱川雪江、武内良夫、山田千恵子、長田智龍、石田幸子、清川毅、片岡弥治右エ門、中西他佳子、坂田善政、岡田健男、寺田源右エ門、河口紀子、萩原豊治、元文伊和男、小東由太夫、前田西平、杉原菊松、横田次郎吉、吉江六兵衛、田中文侑、細井博三郎、小林一夫、田中泰治、河野仙治、山田信子、笠島修の各回答書

一、松田祐三郎作成の査察事件調査事積報告書(五月六日付、同月二四日付、八月二六日付二通、同月二八日付三通、九月一〇日付二通、同月一八日付、同月一九日付六通、同月二〇日付)

一、岡本良策作成の査察事件調査事積報告書(五月二三日付、九月一〇日付二通)

一、井上外雄作成の査察事件調査事積報告書(五月六日付)

一、山岸幸作成の査察事件調査事積報告書

一、古谷直二作成の査察事件調査事積報告書

一、中村絹子の収税官吏に対する質問顛末書

一、中村正徳の収税官吏に対する質問顛末書(三月一五日付、同月二七日付、同月二八日付、同月二九日付、九月五日付二通)

一、井関繁雄の収税官吏に対する質問顛末書

一、収税官吏宛笹村栄、中条正夫、小鍛治徳治(五月二一日付四通、九月六日付)、小林竜三、岩橋主計、酒井昭夫、奥田忠、武田三郎、長田芳雄、岩根英樹(三通)の各上申書

一、被告人中村巽作成の上申書(六月一〇日付、同月三〇日付三通、八月二二日付三通、同月三〇日付二通、九月五日付四通)

一、被告人中村巽の収税官吏に対する質問顛末書(八月八日付、九月六日付二通)

一、被告人中村巽の検察官に対する供述調書

一、登記官今西善明作成の株式会社中村に関する登記簿謄本を綜合してこれを認める。

三、適用法令

被告人中村巽の判示各所為は法人税法第一五九条第一項、第七四条第一項第二号に、被告人株式会社中村の判示各所為は同法第一六四条第一項・第一五九条第一項・第七四条第一項第二号に該当するところ、以上はいづれも刑法第四五条前段の併合罪であるから、被告人中村巽については所定刑中懲役刑を選択し、刑法第四七条・第一〇条に従がい犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をなした刑期範囲内で懲役一〇月に処し、被告人株式会社中村については、同法第四八条第二項に則り各罰に定められた罰金の合算額以下で罰金一、五〇〇、〇〇〇円に処すべく、被告人中村巽に対する刑の執行猶予につき同法第二五条第一項を適用して主文のように判決する。

(裁判官 中野武男)

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